すこやか 2024 秋冬号 No.21
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*****短鎖脂肪酸には抗炎症作用もあります。短鎖脂肪酸は、免疫細胞の切替スイッチとしてはたらき、免疫(炎症)のブレーキ役である制御性T細胞(Tレグ)を増やし、炎症状態を抑えます。このような作用は、大腸炎の治療につながると期待されています。また、最近の研究では、アレルギー反応を引き起こす物質を出す肥満細胞(マスト細胞)の活性化を抑えることによって、アレルギー反応を抑制することもわかってきました。こんなにすばらしいはたらきをするのであれば、短鎖脂肪酸を含むお酢やチーズ、バターなどを口から摂ってしまえばいいのでは?と思うかもしれません。しかし、食べ物や飲み物からの短鎖脂肪酸は、小腸で素早く吸収されてしまいます。これでは効果があっても、ほんの一時であるばかりでなく、大腸まで短鎖脂肪酸が届きません。そこで大事なのが腸内細菌に   7  よる腸内発酵。腸内細菌によって食物繊維からできる短鎖脂肪酸は一時的ではなく、食物繊維が腸内を通過するあいだ持続的に一定の濃度でつくられます。この持続性こそが食事で摂る短鎖脂肪酸と決定的に違うところ。ところが、いくら食物繊維を摂っても腸内細菌がしっかりしていないと十分な発酵ができず、食物繊維はただ通過してしまうだけ。腸内細菌をととのえておくことも大事ですので、乳酸菌生成エキスを利用するのも一つの手です。事実、乳酸菌生成エキスの飲用で短鎖脂肪酸の1つ、酢酸が増加するというデータもあります。最近、妊娠中の母親の腸内環境が胎児や生まれた子供の将来の健康状態に影響することが報告されています。これらには、食物繊維が発酵されることでできる短鎖脂肪酸が深く関わっています。実際に、妊娠中の母親の食物繊維摂取量と子供の神経発育との関連性を調べた調査では、食物繊維の摂取量不足により、子供のコミュニケーション能力や問題解決能力などに関する脳の発達に遅れが出やすい傾向が示されています。また、母親の腸内環境は短鎖脂肪酸を介して、免疫細胞の発達や胎児期のエネルギー代謝系に影響することで、アレルギーや肥満体質の抑制につながることも報告されています。らきを具現化する実行役の1つが短鎖脂肪酸です。それを持続的に、かつ一定の濃度で供給を受けるために、われわれはその作業を腸内細菌にゆだねています。カラダ中ではたらく短鎖脂肪酸を十分に供給するためには、材料となる食物繊維、特に水溶性食物繊維をキチンと摂り、腸内細菌に気持ちよく発酵してもらうように努める必要があります。食物繊維の能力を十分に発揮するには、やはり腸内環境ということです。食物繊維や腸内細菌のはた影響母親の摂る食物繊維からつくられる短鎖脂肪酸は、おなかの中の赤ちゃんにも影響。食物繊維の摂る量が少なく、短鎖脂肪酸が不足していると生まれた後や将来、アレルギーや肥満のリスクが増加したり、脳の発達に影響することも。出生後 / 将来免疫の発達喘息の抑制肥満体質の抑制脳の発達食物繊維短鎖脂肪酸腸内細菌腸内発酵でできる短鎖脂肪酸が大事!アレルギーや炎症を鎮める子孫にも影響?

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