ホタテ由来プラズマローゲン

Scallop derived Plasmalogen

1.プラズマローゲンとは

ホタテ由来プラズマローゲン早わかり

「プラズマローゲン」は、生体内で重要な働きをしている脂質の仲間です。生命活動を支える生体膜を酸化から守り、細胞機能を維持する重要な成分です。プラズマローゲンは、年齢とともに減少する成分で有り、また脳機能にとって重要であることやアルツハイマー病とも関連があることがわかってきました。最近の研究では、プラズマローゲンの経口摂取によって、認知機能(記憶)が改善すること、血中プラズマローゲン濃度が上昇することが示されてきました。

プラズマローゲンは、動物に広く分布していますが、特にホタテ由来のプラズマローゲンは、主にDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの多価不飽和脂肪酸で構成されていて、より機能性が高いと推定されており、注目のブレインフードなのです。

ホタテ由来のプラズマローゲンのおすすめポイントは、3つ。

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もっと詳しくプラズマローゲン

プラズマローゲンの存在自体は90年以上前に未知の成分として発見されており、特徴であるビニルエーテル結合を含むグリセロリン脂質として同定されたのは60年ほど前になります。生化学の教科書にも登場するように、全く新しい生体成分と言うわけではありません。プラズマローゲンは、体中に存在するリン脂質の仲間で、動物やある種の細菌に広く存在します(図1)。

図1. 脂質の分類

リン脂質は、両親媒性(水になじむ親水基と油になじむ親油基の両方を持つ)の性質から、脂質二重膜を形成して、細胞膜などの生体膜を構成します(図2 A, B)。人体においてプラズマローゲンは、この生命の根源である膜を形成するリン脂質の2割くらいを占めています。リン脂質(グリセロリン脂質)は、グリセリン骨格に脂肪酸とリン酸が、さらにリン酸には窒素が含まれるアルコールが結合しています。この脂肪酸やアルコールにはさまざまな種類があるため、組み合わせによって極めて多くの分子種が存在します。多くのグリセロリン脂質は、ジアシル型と言われ1番目(Sn-1)の脂肪酸のところがエステル結合(-O-CO-CH2-)しています。プラズマローゲンは、この部位がビニルエーテル結合(-O-CH=CH-)しているのが特徴です(図2 C)。

図2. リン脂質とその構造

生体内でのプラズマローゲンの機能は多岐にわたります。細胞膜内の2次伝達物質の貯蔵、膜からのコレステロール排出、膜融合、血小板活性化因子の前駆物質などとして働いています。中でもプラズマローゲンは活性酸素種と反応しやすいビニルエーテル結合を持つことから、細胞膜内の抗酸化物質として機能していると考えられています(図3)。細胞膜の主たる構成分子であるリン脂質は、活性酸素種の酸化ターゲットとなりやすく、さらに脂質過酸化反応と呼ばれる連鎖的な反応がおこり、次々に脂質が酸化されていきます。細胞膜を酸化から守る上でも抗酸化は重要な機能で有り、他に抗酸化成分はいくつもありますが、膜自体を構成しているプラズマローゲンは、膜内抗酸化の要として機能していると考えられます。

図3. プラズマローゲンの機能

プラズマローゲンが注目されたキッカケ

プラズマローゲンと神経機能、特に認知機能との関連が注目されるようになったのは、アルツハイマー病患者における脳内(前頭葉、側頭葉および海馬)や血清中のプラズマローゲン量が減少していたことが報告されてからです。これらの場合、他のエステル結合型のリン脂質は変化していないのに対して、プラズマローゲンだけが減少しているという非常に興味深いものでした(図4)。

このような研究をうけ、外因性のプラズマローゲンの摂取がどのような効果をもたらすかは、必然的に興味がもたれます。しかし、当時はまだ生体試料からプラズマローゲンだけを大量に取り出す技術がありませんでした。また、分析も煩雑であることも障害となっていました。近年その研究が進み、今から10年ほど前に生体試料から純度の高いプラズマローゲンの抽出技術や簡便な分析方法が開発されました。そのおかげで培養細胞への添加試験や実験動物での経口摂取試験が実施できるようになり、プラズマローゲンの有効性に関する研究がいっきに進み始めました。ホタテ由来プラズマローゲンもこのような背景の中、プラズマローゲン構成成分の分析や抽出技術の確立がなされ、特徴的な脂肪酸構成が明らかになるとともに、高純度のプラズマローゲンが得られるようになりました。さらにこの成功をうけ、2014年より大規模な臨床試験も実施されました。 次はより詳しく「ホタテ由来プラズマローゲン」の特徴について紐解いていきます。

2.ホタテ由来プラズマローゲン

より高機能なプラズマローゲン型

写真1. ホタテ貝

ホタテ貝(Mizuhopecten yessoensis、写真1)は、寒冷海洋性の二枚貝で、食用として重宝されています。貝柱は肉厚で淡泊、ほぐれやすく風味もよく、刺身やバター焼きなどさまざまなに調理されます。また外套膜、いわゆるヒモも生食や燻製などにして食されています。貝類にももちろんプラズマローゲンは含まれています。さまざまな生物原料からのプラズマローゲンの抽出を検討している中で、ホタテ貝由来のプラズマローゲンは有用性が高いと推定されました。その第一の理由として、DHAやEPAといったω-3系長鎖多価不飽和脂肪酸(長い炭素鎖で二重結合をたくさんもつ脂肪酸)が高含有であることが挙げられます。これは海洋生物由来ということ、さらに比較的寒冷な海に生息するために融点の低い(EPA: -54℃、DHA: -44℃)不飽和脂肪酸をリン脂質中に多く蓄えていることに由来します。プラズマローゲンにはリン酸に結合するアルコール類で種類が異なりますが、このうちエタノールアミンが結合した型(PE型)でEPAが約26%、DHAが約29%と総脂肪酸の50%以上を占めます。また、コリンが結合した型(PC型)においてもEPAが約6%、DHAが約30%という構成になっていて、総じてDHAを多く含んでいます(図5)。第二に、結合しているアルコールの種類に少し触れましたが、この割合も生物種(あるいは用いる部位)毎に特徴が有ります。ホタテ貝の場合、PE型が多いという特徴があり(図6)、このPE型のプラズマローゲンは、ヒトでは脳に多いプラズマローゲンの型になります。

図5. ホタテ由来プラズマローゲンの脂肪酸組成
図6. ホタテ由来プラズマローゲンのクロマトグラム

また、脂質の構成がプラズマローゲンの抽出・精製に向いているということもホタテ貝を選択する理由の1つとなります。中性脂質(トリアシルグリセロールなど)、いわゆる油が少なく、リン脂質の比率が他の原料と比べて高いのが特徴です。これはリン脂質を抽出・精製するのに有利です。さらにリン脂質中に含まれるプラズマローゲン(エーテルリン脂質として)の割合も高く、高純度プラズマローゲンの抽出材料としては最適なのです。事実、製品化されているホタテ由来プラズマローゲンはプラズマローゲンの他は、わずかな海産物特有のセラミドとコレステロールを含むのみとなっています(図6)。

これらの特徴のおかげで、①高機能(DHA高含有)な、②ブレイン素材(高PE型率)で、③高純度(プラズマローゲン以外の脂質が少ない)なプラズマローゲンがホタテ貝から得られます。

ホタテ由来プラズマローゲンの課題

ホタテ貝より高機能なプラズマローゲンを、高純度に取り出すことができるようになりましたが、高機能/高純度ゆえの課題もでてきました。ホタテ由来プラズマローゲンの特徴として、DHAやEPAを含有している割合が高いことが挙げられますが、DHAやEPAは油状で存在する場合、他の脂肪酸と比較して酸化されやすい特徴を持ちます(図7A)。そのため、プラズマローゲンの特徴であるビニルエーテル基に加え、さらに酸化されやすい性質を持つことになり、他の原料由来のプラズマローゲンと比べて安定性という部分が課題でした。また、これはどのプラズマローゲンにもあてはまりますが、純度が上がると油分としての流動性はなくなり、半固形(ガム質)となってしまいます(図7B)。これにより製品へと加工する際に取扱いが難しく、他の油分と再混合して使用するなどの工夫や、あるいは純度を上げずに他の油成分と一緒に取り扱うことが必要となります。高度な技術を駆使して高純度化しても、他の油分と再度混合しないと使用できず、また抽出・精製前の状態に戻して使用するというジレンマが発生することになります。

図7. DHA, EPAの構造と生成されたホタテ由来プラズマローゲン

課題の克服
~次世代型ホタテ由来プラズマローゲン~

図8. 環状オリゴ糖と粉末化ホタテ由来プラズマローゲン

この高機能・高純度に起因するホタテ由来プラズマローゲンの課題を解消したのが、粉末化技術です。ホタテ貝より抽出した高純度プラズマローゲンを環状オリゴ糖(シクロデキストリン)に包み込んで(包接)、粉末化を実現しました(図8B)。環状オリゴ糖は、フタ・底のないカップ状(円錐台形)になっていて、その内径は~1.0nm(ナノメートル、1mmの1/1,000,000)と、ナノ粒子(ナノカプセル)といえます。カップ内は油になじみやすく(親油性)、内側に疎水性の高い分子を取り込む性質があります(図8A)。プラズマローゲンの場合、リン脂質の疎水性部分、つまり脂肪酸側鎖が環状オリゴ糖の中に入ると予測されます。つまり分解されやすい脂肪酸側鎖を環状オリゴ糖のナノカプセルで被い、熱や酸化、加水分解から守り、保存性が高まると推定されます。事実、粉末化ホタテ由来プラズマローゲンは過酷環境下(60℃高温環境)においてもすばらしい安定性が発揮されることが示されています(図8C)。環状オリゴ糖に包まれたプラズマローゲンは、環状オリゴ糖内に固定されたままではなく、水分にふれると放出(徐放)されます。また、使用している環状オリゴ糖は水溶性でかつ、消化性があり小腸で消化されます。徐放後のプラズマローゲンはリン脂質の特徴がすぐに発揮され、エマルジョンを形成し、輸送・吸収されるものと推察されます。取扱い面においても流動性の高い粉末で取扱いがし易く、製品の形態を一変させる技術革新となりました。ハードカプセル化、錠剤化、その他粉体加工への適応が可能となり、幅広い製品展開が期待される素材です。

図8. 環状オリゴ糖と粉末化ホタテ由来プラズマローゲン

3.機能から見るプラズマローゲン

ここからはプラズマローゲンの機能についてお伝えします。

プラズマローゲンの抗神経炎症作用

神経の炎症とは、グリア細胞という脳内における免疫細胞が活性化し、炎症性サイトカインや活性酸素種の産生が盛んになっている状態で、アルツハイマー病をはじめ多くの神経疾患で見られます。動物を用いた試験で、細菌由来のリポポリサッカライド(LPS)の投与で、脳神経系の炎症と認知症とも関係深いアミロイドβ蛋白質(Aβ)の蓄積が起こることが知られていますが、プラズマローゲンの投与によって、炎症性サイトカインの産生およびAβの蓄積が抑制されることがわかっています(図9)。その機構として、LPSの受容体であるToll-like受容体4(TLR4)の細胞内への取り込み(エンドサイトーシス)を抑制し、その後の炎症性シグナル伝達の活性化を抑制することにあると推定されています。

図9. プラズマローゲンの抗神経炎症作用

プラズマローゲンの神経細胞死抑制作用

図10. プラズマローゲンの神経細胞死抑制作用

アルツハイマー病やパーキンソン病を代表とする神経細胞変性疾患は、進行性の神経細胞死を特徴とする疾患です。非分裂細胞群に属する神経細胞は、若干の神経新生はあるものの出生のあと神経細胞数は減少していくのみと考えられています。これらの疾患は、生理的な神経細胞死をはるかに超えるスピードで神経細胞死が進行していくことに起因しています。マウス海馬の初代培養系や培養神経細胞では、培地の血清飢餓によって細胞死が誘導されることがわかっていますが、プラズマローゲンの培地への添加によって、血清飢餓による細胞死が抑制されることが示されています(図10)。さらにその機構として、ミトコンドリアでの生存シグナルと関連するタンパク質リン酸化酵素であるAKTやERK1/2が活性化することが示唆されており、プラズマローゲン自体が生存シグナルに関連していると考えられています。

プラズマローゲンの学習記憶改善作用

図10. プラズマローゲンの神経細胞死抑制作用

動物(マウス)を用いた試験において、細菌由来のリポポリサッカライド(LPS)の投与で、脳神経系(グリア細胞)の炎症とAβの蓄積が起こるとともに、水迷路学習試験で空間認知学習が障害されることが示されています。プラズマローゲンを継続的に摂取しているマウスと同様にLPSの投与を行った結果、プラズマローゲンを摂取していなかったマウスに比べて、空間認知学習への障害が軽減されることが示されました(図11)。また、プラズマローゲン摂取マウスでは、グリア細胞の炎症性シグナルおよびAβの蓄積が抑制されていることも確認されました。プラズマローゲンはグリア細胞という脳内における免疫細胞の活性化を抑制することで、認知機能(学習記憶)の改善をもたらしたと推定されます。

ホタテ由来プラズマローゲンの
軽度アルツハイマー病および
軽度認知障害への効果

モデル動物のプラズマローゲン経口摂取の研究成果を受け、認知症に対するホタテ由来プラズマローゲンの臨床的な効果について検討が行われています。全国25施設で軽度アルツハイマー病(軽度AD)と軽度認知障害(MCI)の328名(60~85歳)を対象に、最も厳密な臨床試験法である無作為比較対照二重盲検試験で実施されました。プラズマローゲン摂取群はホタテ由来プラズマローゲン配合(1mg/日)食品を、対照のプラセボ摂取群は、プラズマローゲンを含まない同様の食品を同量、各24週間摂取して摂取開始前と摂取終了時に各種検査が行われました。

その結果、ウエクスラー記憶検査(WMS-R)においてプラズマローゲン摂取群では、女性および77歳以下男女でプラセボ群と比較して有意な記憶の改善が認められました(図12A)。また、軽度AD患者における血中プラズマローゲン濃度がプラセボ群と比較して有意に高値に維持されていました(図12B)。このことはAD患者では血中プラズマローゲン濃度は時間の経過とともに低下すること、プラズマローゲンを継続的に摂ることでこの低下が防げることを示しています。

図12. 軽度AD患者における記憶機能の改善

ホタテ由来プラズマローゲンの
認知症(中等度・重度)への効果

表1. 中等度・重度AD患者におけるプラズマローゲン摂取効果 (MMSE及び血中プラズマローゲン濃度の変化)

軽度AD患者およびMCIへの臨床効果が検証される一方、より重篤な認知症患者に対する効果も検証されています。中等度・重度AD患者(MMSE 19点以下)157名を対象にホタテ由来プラズマローゲン0.5mgまたは1mg/日を12週間摂取し、摂取前と摂取終了時に検査がおこなわれました。

その結果、有効解析例142名において、摂取終了後は摂取前と比べて、MMSEが有意に改善していました。なお、投与量による差異は認められませんでした(表1)。摂取終了後MMSEの改善率は、50%以上であり、その内訳は、著明改善(MMSE+4点以上)が25.4%、改善(MMSE+2点以上)が26.8%でした。なお、不変(MMSE±2点)は36.6%でした(図13)。中等度・重度AD患者においては、通常何もしなければ、認知機能は経時的に低下していきます。このことを考慮すると、プラズマローゲンの摂取によって認知機能が維持されている点でも、効果が表れていると解釈できます。

また、血中プラズマローゲン濃度についても検証され、摂取終了後に有意な上昇が確認されています。特に赤血球膜のプラズマローゲン量の変化はMMSEの変化とやや相関が見られました(Pearson’s r=0.20, P=0.01)。このことは血中プラズマローゲン濃度(特に赤血球膜プラズマローゲン)の測定が、AD重症度や治療効果の評価指標の一つになると考えられます。

ホタテ由来プラズマローゲンの
認知症周辺症状への効果

臨床試験参加医療機関の一部において、認知症における行動あるいは心理症状(周辺症状、BPSD)について検証されました。その結果、幻覚、抑うつ、不潔行為、妄想が高い割合で改善していました(図14 A)。また、介護者・家族目線の評価として、被験者の表情(笑顔)や気遣いといった項目で非常に高い回復率が認められています(図14B)。認知症の症状は、記憶障害や見当識障害などの中核症状にのみ焦点が置かれがちですが、周辺症状や表情(笑顔)等は認知症患者の介護者や家族のQOL(生活の質)へ大きく影響する要因です。その対策は認知症の治療やケアにおいて、重要度は高く、プラズマローゲンの周辺症状改善効果は、認知症治療・ケアにおいて非常に有効だと考えられます。

図14. 中等度・重度ADにおける周辺症状(BPSD)の改善と表情、気遣いの変化

機能性表示食品としての
ホタテ由来プラズマローゲン

2015年にスタートした機能性表示食品制度。これは事業者の責任で消費者庁に届け出をおこなう制度で、科学的根拠を基に「特定の保健の目的が期待できる(健康の維持および増進に役立つ)」という食品の機能性を表示することができます。ホタテ由来プラズマローゲンも科学的な根拠を基に届け出がなされ、2019年6月に届出番号D545で上市されています。その表示では、「本品にはホタテ由来プラズマローゲンが含まれます。ホタテ由来プラズマローゲンには、認知機能の一部である、空間認知能や場所を理解する能力といった記憶力を維持する機能があることが報告されています」としており、記憶力の一部を維持することを提言しています。

科学的根拠では、臨床試験の一部を再解析して得られた結果が公表された論文を採択しています。健常領域(境界領域)者178名の解析結果で、MMSE-J(MMSE日本版)の項目の一つである「場所の見当識」において、プラズマローゲン摂取群で24週後にプラセボ群と比較して有意な改善が示されています。また、「時間の見当識」についてはプラセボ群で24週後に有意に低下したのに対して、プラズマローゲン摂取群では24週後もベースラインを維持していました(図15)。

図14. 中等度・重度ADにおける周辺症状(BPSD)の改善と表情、気遣いの変化

機能性表示食品として、あるいは他の食品として様々な角度から製品化が検討されており、気軽に利用できるように応用研究も進んでいます。

4.プラズマローゲンの可能性

これまで主に認知機能や神経細胞に対するプラズマローゲンの機能について紹介してきました。しかし、プラズマローゲンは全身を構成する細胞、しかもその膜を構成する重要な生体脂質です。生体膜は生命にとって最も重要な存在です。「膜」が内と外を分けることで生命としての自己を維持し、「閉じて」生命維持に関わる化学反応を効率的に行うことができます。一方で生命維持・活動を行うためには、外との交流を持つ必要があり、「開いて」いる必要もあります。化学反応に必要なものを摂り入れ、不要となったものを出す必要があります。生命活動は外部から「閉じていると同時に開く」必要があり、この相反することを実現しているのが「膜」です。生命の根源ともいえる膜の機能を支え、また守っているのがプラズマローゲンという分子なのです。

ヒトのような好気生物が生命活動をしていくうえで、酸素の利用はエネルギー産生をしていくうえで必須です。生命活動に伴い活性酸素種は、必ず生成されます。生体膜において、活性酸素種はかなりの脅威となります。もちろんプラズマローゲン以外にも様々な生体抗酸化物質が存在し、活性酸素種の脅威から逃れる仕組みを持っています。しかしプラズマローゲンと他の抗酸化物質の決定的な違いは、膜自体かそれ以外かということになります。そうプラズマローゲンは膜そのものなのです。実は膜自体が抗酸化機能を持っているのです。そのプラズマローゲンがなくなる、あるいは減少するということは、膜の機能が損なわれるということであり、細胞の機能が低下することに直結します。これは脳神経細胞に限った話ではなく、すべての細胞に起こりうることです。事実、動脈硬化や心疾患でのプラズマローゲンの減少が確認できている他、その他の疾患でもプラズマローゲンの減少が確認されつつあります。

現在、さまざまな生物材料からプラズマローゲンが抽出できるようになり、それを経口で摂取できるようになりました。まだその摂取効果についての研究はやっと入り口に入ったばかりです。今後、さらに研究が進み、様々な疾患に対する予防あるいは治療への応用、生体脂質としてのプラズマローゲンの機能解明が進むことが期待されます。

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