03.乳酸菌生成エキスと腸内細菌
「常在菌」 と言われる様々な種類の細菌が我々のカラダに土着して住んでいます。ヒトの場合、常在菌が最も多く存在するのは腸管ですが、その種類はひとり当たり160種程度、数にして100兆個以上と言われています。ある記述では、1,000兆個とも言われています。また、遺伝子の数を類推した研究では、ヒトの遺伝子数は、約2万〜2万5千個ですが腸内細菌由来の遺伝子はその150倍にあたる330万個だと推定されています。腸内細菌になりうる細菌種は、1,000種以上になると推定されており、それらの細菌が個人個人で異なるバランスで定着しています。
このような腸内細菌は、我々ヒトが分解できない食物成分などを分解してくれたり、ある種のビタミンやホルモンなどを合成してくれたり、腸内環境の維持にとても重要な働きをしています。腸内細菌と我々の健康状態との関連は密接で、現在では免疫系、大腸ガン、肥満、脳の発達、寿命などへの影響が盛んに研究されています。
では、腸内細菌のうちで善玉菌とされている乳酸菌に関してはどうでしょうか。 分類学的には、ビフィズス菌は乳酸菌と区別されていますが、腸内細菌叢の構成菌としてラクトバチルス属やストレップトコッカス属よりも遙かに構成比率が高く、腸内での役割も重要であるので、ここではビフィズス菌も含めて、「乳酸菌」として扱いたいと思います。様々な研究からビフィズス菌や他の乳酸菌も種レベルあるいは株レベルで、各個人で保有している菌種が異なること、さらに菌構成の安定度や経時変化度も個人でバラバラであることがわかってきています。また、市販のビフィズス菌を生菌として摂取した後の糞便中のビフィズス菌数をモニターする試験を実施すると、摂取期間中はビフィズス菌数が増加するが、摂取を停止すると1週間で元の水準に減少することが観察されています。この結果から考えると外来の菌株は、宿主に定着・定住できないと予想され、「私には私の乳酸菌」が存在し、さらにこれらの菌構成や安定度は決して一定ではなく、年齢やライフスタイルの変化によって変わっていくようです。
以上のことを考えると、より多くの人の腸内細菌バランスを効果的に改善するには、生きた乳酸菌を大量に摂取するのではなく、自身の保有する独自の乳酸菌をととのえ、固有の腸内細菌のバランスを保つことが大切だと言えます。まさに、「乳酸菌生成エキス」はこのような考えのもと生まれてきました。「乳酸菌生成エキス」は、生きた乳酸菌は一切含んでいませんが、自身の腸内細菌に働きかけ、バランスを調節することができます。健康な成人男女における摂取試験では、摂取後はビフィズス菌の量が増え、それとリンクするように有機酸の一種である酢酸が増加します。ビフィズス菌が増えていたのはもとより、腸管保護成分であり腸内環境の指標となる酢酸量に差が出たのは非常に有用だと考えられます。
この事例のように、腸内乳酸菌類が増加することで、「私には私の乳酸菌がいます」、「私の乳酸菌を増やしましょう!」 と言うことができます。確かに腸内有用菌が増えることはいいことです。同時に、腸内細菌全体としてのトータルバランスが重要となります。「乳酸菌生成エキス」には、それを調節することができると考えられます。