うつ病の症状を改善!心の病気にもプラズマローゲン
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うつ病及び抑うつ神経症患者を対象にした研究で、ホタテ由来プラズマローゲンの摂取が「不安」「疲労」「睡眠」などのうつ病の症状を改善することがわかりました。プラズマローゲンでは初めてのうつ病での研究報告です。本研究は、2023年4月27日に国際ジャーナル「Mega Journal of Case Reports」に掲載されました。
その最新研究の結果をご紹介します。
目次
うつ病とは
うつ病は、世界でもっとも一般的な精神疾患であり、世界のうつ病患者数は約2億8000万人(2021年・WHO)にも上ります。
“気分が落ち込む、やる気がでない”などの精神的症状の他、“疲れやすい、眠れない”などの身体的症状が現れることもあります。
うつ病の治療は、十分な休養をとり周囲の環境を整えることに加え、「抗うつ薬」などの治療薬を使用する薬物治療やカウンセリングに代表される精神療法が主流となっています。ですが、完全な回復はまれと言われており、再発のしやすさや治療の長期化などの問題を抱えています。そのため、通常治療の効果を補う目的でハーブや食品由来成分を活用する試みが行われており、プラズマローゲンもその候補の一つとして、現在、精神疾患の分野で研究が進められています。
プラズマローゲンの働き
プラズマローゲンは、体の中で重要な働きをするリン脂質というアブラの一種です。
あらゆる動物に存在し、ヒトでは脳や心臓などの酸素を大量に消費する臓器に多く含まれることがわかっています。
特にホタテから抽出したホタテ由来プラズマローゲンは、他由来のプラズマローゲンに比べDHA(ドコサヘキサエン酸)を豊富に含有しており、ヒトの脳に多いエタノールアミン型プラズマローゲンが多いことが特徴です。
これまで、ホタテ由来プラズマローゲンの経口摂取により、アルツハイマー病患者や軽度認知障害(MCI)の方の認知機能が改善されたことが報告されています。
実は、うつ病とアルツハイマー病は【海馬の萎縮、アミロイドβの変化、免疫に関係する炎症性サイトカインの値の上昇】などの一部の病態が共通しており、かねてよりホタテ由来プラズマローゲンの経口摂取がうつ病をはじめとした精神疾患の治療に役立つのではないかと考えられてきました。
試験概要
精神科・心療内科のオボクリニックに通う、うつ病と抑うつ神経症患者を対象にホタテ由来プラズマローゲンを3カ月間摂取していただき、症状の経過を調査しました。
対象者 | オボクリニック(東京都新宿区)に通院する患者 17名 (うつ病患者:11名 抑うつ神経症患者:6名) |
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期間 | 3ヵ月 |
摂取量 | ホタテ由来プラズマローゲン 1.0mg/日 |
評価項目 | ①STAI(状態・特性不安尺度) 不安状態を測定する心理検査。得点が高いほど不安感が強いことがわかる。 ②疲労度チェックシート 身体的疲労度と精神的疲労度のチェック。得点が高くなるほど、疲労度が強い。 ③VAS(視覚評価スケール) 気分・感情の評価尺度(緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱)それぞれの感情が強いと、値が高くなる。 ④OSA睡眠調査票MA版 起床時の睡眠感を評価する心理尺度(起床時の眠気、入眠/睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間)得点が低いと、睡眠感に問題があるといえる。 |
研究報告① 不安感の軽減
不安状態を測定する心理検査・STAIを実施したところ、特に「特性不安」が顕著に軽減しました。
「特性不安」はその人の性格に由来する不安になりやすい傾向のことで、この特性不安の得点が高い人は、ストレスがかかるといつも不安になりやすいといえます。
この傾向は周囲の環境の変化に応じて変化することがあまりなく、治療には時間がかかるとされています。
今回の試験では摂取前の平均が61点と高く、不安になりやすい状態でしたが、摂取1カ月で有意に軽減。3カ月後にはさらに改善が進みました。(グラフ❶参照)
また、その場の環境や出来事、対象に対して抱く一時的な不安を示す「状態不安」にも有意な改善が認められました。
研究結果② 疲労度の軽減
うつ病患者は常に不安や緊張状態が続くため、体も心も疲れやすいという傾向がありますが、摂取開始から徐々に疲労度が軽くなり、摂取3カ月後には「身体的疲労」も「精神的疲労」も有意な改善が認められました。(グラフ❷参照)
研究結果③ ネガティブ感情の改善と活気の向上
気分・感情の変化を測定したところ、「抑うつ」や「混乱」といったネガティブな感情が改善(グラフ❸-1参照)し、活気が向上する(グラフ❸-2参照)ことも認められました。
研究結果④ 睡眠の質の改善
睡眠の質では、評価項目のうち「起床時の眠気」と「疲労回復」において徐々に改善を示し、摂取3カ月後には有意な改善が見られました。
さらにポイント!
今回の試験では、対象者の抗うつ薬の使用の有無、罹患歴の長さによって結果に影響があるかも解析を行いました。
その結果、一部(抗うつ薬使用の有無における③気分・感情の評価尺度の「混乱」、罹患歴の長さにおける③気分・感情の評価尺度の「緊張」)で差がみられたものの、全体的にはおおむね差はないことから、各々の患者の背景に左右されず、多くの患者に対して有効であると考えられます。
今後の展望―プラズマローゲンとうつ―
今回の研究結果から、ホタテ由来プラズマローゲンがうつ病や抑うつ神経症の症状を緩やかにし、患者のQOL(生活の質)の向上に役立つ可能性があることがわかりました。また、うつ病患者の2/3が抱える不安障害は、うつ病再発や治療後の経過維持に大きく関係しているといわれています。ホタテ由来プラズマローゲンの摂取で不安が軽減したことは、再発の心配に悩まされることの多い臨床の現場にとって大きな意味を持ち、ホタテ由来プラズマローゲンの活用は、医師による通常診療との組み合わせによって根本治療の一助になることが期待できます。
今後、研究が進むにつれ、精神疾患分野においてもホタテ由来プラズマローゲンの有用性が明らかになっていくことでしょう。
私たちは、ストレスの多い現代社会の中でホタテ由来プラズマローゲンがメンタルヘルスに悩みを抱えるすべての人の救いになることを目指し、これからも研究を進めてまいります。